夢幻喫茶の座談帳

夢香「ここは竜崎飛鳥さんが気紛れに再開し始めたなりきりブログ? ってやつだよ」

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人魚に恋した、魔法使い(コミティア101新刊サンプル2)

  1. 2012/08/22(水) 14:58:59_
  2. 創作日記
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 それから、幾日か経ったある日――。




「えっ!? フィナル様が鬱ぎこまれてるって、一体どういう事ですか!?」

 突如城への要請があり、王に謁見したところフィナルの現状を告げられた。

「言葉の通りだ、ミーティス。先日のあの子の誕生日を境に、様子がおかしいのだ……。わしらも理由を問うたが、話そうとせん……」

 ほとほと困り、そなたを呼んだのだと、年老いた王は蓄えた髭を撫でながら、告げる。

「そなたなら、フィナルも口を開くやもしれん。頼めないだろうか?」

 拒否権は、恐らくない。仮にあったとしても、秘かとは言え思いを寄せている相手が鬱ぎ込んでいると言われては、選ぶ答えはたった一つ。

「……御意のままに、我等が王」




 満面の笑みで承諾の答えに頷く王に許可を得て。謁見の間からフィナルの自室の前へと訪れたミーティス。何処か、緊張した面持ちで……。

(そう言えば……初めてだった…………)

 フィナルの自室に訪れるのは、実はこれが初めて。いくら王に信頼され、彼女とも仲が良いとはいえ所詮は呪い師。住む世界が違うのだと線引きをして、必要以上に踏み込む事はしなかったのだ。故に、謁見の間とそこに通ずる廊下、そして何か祝い事が催された際に招かれるホール以外、足を踏み入れた事はない。

(どんな……部屋だろう……)

 思いを寄せるフィナルの自室。優しい香りに包まれた、美しい部屋だろうか。期待に胸を高鳴らせながら、コンコンとドアを叩いた。

「……はい」

 鈴を転がしたかのような、声。どくん、と高鳴る心音を無視し、声が裏返らぬよう平静を努めた。

「……私です、ミーティスです」

「あら、ミーティス!?」

 小さな驚愕と、喜びを含んだ声。近付く音が聞こえ、ガチャリと扉が開いた。

「どうしたのミーティス!? 遊びに来てくれたの!? わ、わ、とっても嬉しいわ!! 今お茶を用意させるから、さ、入って!!」

 キラキラと、海面から射し込む日の光のように眩しい笑顔。ぽーっとミーティスはそれに見とれていたが、「早く早く!!」と急かす声に我に帰り、おずおずと入室した。

「し、失礼します……」

 促されて足を踏み入れた部屋は、予想通り綺麗な調度品に囲まれた、美しい部屋。使用人が毎日掃除を行っているのであろう、床や棚には塵一つない。

 寝室は別の部屋に宛がわれているのであろう。ベッドのない、寝室と自室が共同になっている部屋よりも遥かに広いその中央。可愛らしい白い貝で造られたイスの一つに、フィナルは座って手招きした。テーブルを挟んだ空席に、ミーティスは腰を降ろす。

 彼の訪問がとても嬉しいのだろう。ニコニコと笑みを浮かべながら、フィナル。

「ふふ、まさかミーティスが遊びに来てくれる日が来るなんて!! 今日はどういったご用事? あ、用事がなきゃ来てはいけないという訳ではない……」

「最近、気を伏せられていると、王から拝聴しました」

 刹那、フィナルの顔が翳る。「……そう」と一言だけ溢し、俯いてしまった。

「フィナル様、何かあったのであればお話し下さい。王もお姉様方も、とても心配されていますよ?」

 勿論、自分も。その言葉は胸の奥に仕舞い込んだ。

 フィナルは、何も語らない。ただ俯き、尾に置いた拳を、じっと見詰めるだけ。

「……無理ならば、話されなくても」

「お父様達には、内緒にしてくれる?」

 突如、切り出された言葉。怯えたような上目遣いに、どくり、と心臓が高鳴る。

「は、はいっ!! 約束致します!!」

 上目遣い、そして『姫と自分だけの秘密』という毒に惑わされ、反射的に頷いてしまう。はっと正気に戻った時には既に遅く、「良かったぁ♪」と安堵の息。そして、頬を朱に染めながら潜めた声で、「あのね……」と告げられた。




「あのね、ミーティス……私、人間の男性に恋してしまったの」




 言葉の意味が、理解出来なかった。

 意味が理解出来ると、次は脳が意味を否定し始めた。

 違う、違う。自分ノ姫ガ、人間ノ男ニ心奪ワレルナンテ……。

 酷い、耳鳴りがする。頭が真っ白になるとは、恐らくこの事を言うのだろう。茫然自失のミーティスを他所に、フィナルは若干照れを交えながらその『出逢い』を話した。

 あの誕生日の夜、幾度も訪れた陸地へと彼女は赴いた。

 フィナルが顔を出した海面では、偶然にも人間の『船』という箱が浮かび、何やら祝い事を行っていた。

 元より好奇心旺盛な事もあり、彼女は縁の隙間まで登り、こっそり甲板の光景を覗き込んだ。そこで、満月の光に照らされて笑う『彼』の姿を見て、一目で恋に落ちたらしい。

 しかし、時に神は残酷で。穏やかだった海は一瞬に大時化へと変化。船は簡単に波に飲まれ、人間達は全員海に投げ出されてしまった。

 慌てたフィナルは、藻屑となった船の破片に包まれながら沈む彼を見付け、気付かれないように陸まで運んだのだという。

 だが、その日を境にあの人間の事が忘れられず、叶わぬ恋に鬱ぎ込んでいたそうだ。

「それで、ね。ミーティス……」

 真剣な、眼差しと言の葉。嫌だ、その先の願いを告げないでと、心が悲鳴を上げる。

 だが、そんな彼の気持ちを露知らず、フィナルは残酷な願いを告げた――。

「私を、人間にして? ミーティス」

 呼吸が、止まる。

 耳鳴りが、酷さを増す。

 息が上手く出来なくて、目を見開きながら、何度も呼吸を繰り返す。

 この美しい姫が、醜い人間になる。自分ではない者に心を奪われ、自分の手の届かない場所に行ってしまう……。

 嫌だ、嫌だと、耳鳴りに混じり声がする。

「……ミーティス?」

 不安げな声に、我に帰った。いつの間にか俯いていた顔を上げれば、心配げなフィナルの表情。

「大丈夫……? 凄く、顔色が良くないけれど……」

「あ、いえ……大丈夫…………です……。しかし姫、自分は」

「わかってる。人間になるって事が、どんなに大変なのか。悩んで、悩んで……それで決めた事なの」

 遮り、伝えられた言葉。それに、揺らぎはない。何処までも固く、真剣。

 一つ、ミーティスは溜め息。

「……人間は、人魚よりも遥かに短命ですよ?」

「わかってるわ」

「……人になっても……結ばれるとは限りませんよ……」

「……ええ」

「……二度と、人魚には戻れないかもしれないのですよ?」

「……覚悟の上よ」

 変わらない、意思。どう足掻いても、この姫の気持ちを変える事は出来ない。

 深々と、悲しみの溜め息を吐く。




「ならば御意のままに、我が姫――」



 ◆◇◆




 これから、皆が知る物語のように声を失い、人へと変じるでしょう。

 この後、フィナルが無事に王子の心を射止めるのか。

 それとも、物語通りに思い叶う事無く泡と変じるのか。

 そして、一途に恋をするミーティスの恋路が、どのような末路を辿るのか……。


 それは、次の月が満ちる晩に――。



















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プロフィール

竜崎飛鳥

Author:竜崎飛鳥
【登場人物紹介】

<夢香>
夢香「はいはーい、夢幻喫茶のオーナーにして飛鳥さんの暇つぶしに巻き込まれている可哀想な少女、その名は夢香(ゆめか)。身長、体重、スリーサイズはヒ・ミ・ツ☆」
凛「真面目に自己紹介してください;」

<大槻凛>
凛「えーっと、大槻凛(おおつきりん)、d「現在花の大学生を謳歌なう♪ 絶賛彼氏募集中の、凄腕イケメンハンター女子でーす☆」って何勝手な自己紹介……じゃなかった、他己紹介してるんですか夢香さん!!」
夢香「えー、だって凛さんそれくらい盛らないと特にあげるところがないくらい平々凡々な大学生じゃーん」
凛「平々凡々で問題ありませんっ!!!」

<竜崎飛鳥>
夢香「(出されたカンペを見ながら)えー、アタシが紹介するのー? 自分でやりなさいよ自分でー」
凛「ま、まぁまぁ夢香さん; これもお仕事ですから;」
夢香「しょーがないなー。えーっと、

『一時期ライトノベル作家を目指してがむしゃらに走っていた元・小説の卵、現・駆け出し主婦。しかし相変わらずオタク兼腐女子気質の為、このブログに顔を出す時もそれ系のネタが多くなるかもしれません。苦手な方は何も見なかったことにして回れ右して戻られることをお勧めします、お互いの為にも。
 また気紛れ旅人を名乗っていた時期同様、その気紛れさも健在の為、突然長期間更新しなくなることもあります。その時はご了承ください』

 だってさー」

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